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請求 — NO RECORDS

タイムカードがない。
それでも残業時間を証明する方法

「うちはタイムカードがないから」と言われても、労働時間がなかったことにはなりません。記録を残す義務は会社側にあります。

公開 2026.10.23改訂 2026.10.23根拠 労働安全衛生法 第66条の8の3

よくある相談 — Q & A

相

相談者

タイムカードがない会社なんですが、請求できますか?

答

回答者

できます。記録を残す義務は会社側にあります。記録がないことで不利になるのは、本来は会社です。

相

相談者

何で証明すればいいんでしょう。

答

回答者

PCのログ、メールの送信時刻、日報、同僚の証言です。立証の考え方を本文で整理しています。

詳しい条件と計算は、この下の本文で確認できます。

01

記録がないのは会社の責任

労働安全衛生法は、事業者に労働時間の状況の把握を義務づけています。賃金台帳にも労働時間の記載が必要です。

記録がないことで不利になるのは、本来は会社側です。

02

使える記録

  • PCのログイン・ログアウト記録
  • メール・チャットの送信時刻
  • 業務システムの操作履歴
  • 日報、営業記録、納品書の日時
  • 入退室の記録、防犯カメラ
  • 同僚の証言

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03

立証の考え方

裁判では、一定の時間働いていたことが推認されると、その範囲で認められる傾向があります。1日ごとに厳密に証明する必要はありません。

「平均して何時間残業していたか」を、複数の記録で示すのが現実的です。

ログから月の残業時間を積み上げる手順

記録がない場合、複数の痕跡を突き合わせて1日の労働時間を復元します。実際の手順は次のとおりです。

  1. 1日の始まりと終わりを拾うPCのログイン/ログアウト、メールの送信時刻、社内チャットの発言時刻。最も早い時刻と最も遅い時刻を、その日の両端にします。
  2. 所定時間を引く9時始業・18時終業なら、拘束時間から休憩1時間を引いた8時間が所定内。それを超える部分が時間外の候補です。
  3. 空白を埋めるログがない日は、日報、打合せの議事録、取引先とのメールから補います。1日単位で穴が空いても、月の傾向は出せます。
  4. 月ごとに合計する日ごとの時間外を合計し、休日労働と深夜労働を分けて集計します。ここで初めて、割増率ごとの金額が出せます。

実例:ログイン8:45/ログアウト21:30の日が月18日、休日出勤が月2日(各8時間)あった場合。拘束12時間45分から休憩1時間を引き、所定8時間を超える部分は1日あたり3時間45分。18日で67.5時間、休日16時間。時間外は67.5時間なので、60時間を超える7.5時間は50%で計算します。

この積み上げは、完璧である必要はありません。「記録がないから0」ではなく「これだけの痕跡がある」と示すことが、交渉の出発点になります。

立証の強さは3段階。何がどれくらい効くか

証拠には強弱があります。すべてを揃える必要はなく、強いものを1つ持っているかが分かれ目です。

証拠の種類と、立証への効き方
段階証拠の例効き方
強いタイムカード、勤怠システムの記録、会社発行のシフト表会社が作成した記録なので、否認しにくい
中くらいPCのログ、メールの送信時刻、社内チャット業務を行っていた時刻の裏付けになる
弱い(補強)手書きのメモ、日記、同僚の証言単独では弱いが、他の記録と整合すれば採用される

会社が記録を保存していないこと自体が、会社側の不利益になります。労働基準法は賃金台帳の保存を義務づけており、労働時間の把握も使用者の責務です。記録がない状態で「働いていない」と主張しても、裏付けがなければ通りません。

実務では、「中くらい」の証拠を束ねて「強い」に近づける方法が取られます。ログ、メール、日報、シフト表を時系列で並べ、1日の労働時間を復元する資料を作ります。1種類で完璧を目指すより、複数で補い合う方が現実的です。

推計が認められる条件。裁判所は何を見るか

記録がない場合、労働者の積み上げがそのまま認められるわけでも、完全に否定されるわけでもありません。裁判所は次の3点を見ます。

  1. 業務量と時間の整合担当していた業務が、所定時間内に収まる量だったか。取引先数、処理件数、受け持ち顧客数から、残業が避けられなかったかを示します。
  2. 会社の関与上司が退勤時刻を認識していたか、深夜のメールに返信していたか。会社が「知り得た」状態だったかが問われます。
  3. 記録の一貫性積み上げた時間が、月ごとに突然2倍になったりしていないか。浮いた数字は、全体の信用を落とします。

実務では、「推計の根拠を数式で示す」ことが有効です。たとえば「担当顧客40件、1件あたり平均25分の訪問準備で月約16.7時間。所定内で処理できるのは10時間分なので、6.7時間が超過」といった形です。業務量から逆算した数字は、記憶による申告より説得力を持ちます。

逆に弱いのは、「だいたい毎日2時間残業していた」という概括的な主張だけです。日付と時刻の裏付けが1つもないと、金額の認定まで届きません。全部の日を揃える必要はなく、典型となる1週間を詳細に復元する方が現実的です。

1週間を実測すると、月の数字が見える

記録がないときに最初にやるべきは、「典型の1週間」を選んで時刻を復元することです。全部の日を揃える必要はありません。残業が平均的な週を1つ選び、ログと記憶から時刻を埋めます。

典型の1週間(所定9:00〜18:00、休憩1時間)
曜日退勤拘束実労働時間外
月20:0011.0h10.0h2.0h
火21:3012.5h11.5h3.5h
水19:0010.0h9.0h1.0h
木22:0013.0h12.0h4.0h
金20:3011.5h10.5h2.5h
週合計——53.0h13.0h

この週の時間外は13時間。月に換算すると、13時間×52週÷12か月=約56時間です。年間52週で割るのは、月ごとの日数差を均すためです。31日の月と28日の月を同じ30日で扱うと、数字がぶれます。

56時間なら、月60時間のラインは超えていません。ここで「繁忙期はもっと多い」という月があれば、その月だけ別に積み上げます。年間を通して一律の数字を主張するより、「通常月56時間、繁忙月◯時間」と分けて示す方が信用されます。

単価1,500円なら、月56時間で105,000円(1,500×1.25×56)。3年分で378万円です。週13時間という地味な数字が、これだけの金額になります。

会社が記録を出さないとき、どう扱われるか

会社には、労働時間を把握し、賃金台帳を保存する義務があります。記録がないのは会社の落ち度であり、その不利益を労働者が負うわけではありません。

記録がない場合の、立証の考え方
状況実務での扱い
会社がタイムカードを導入していない労働者側の積み上げが軸になる。会社は反証を出せない
記録はあるが開示しない裁判では文書提出命令で出させる方向に進む
記録を改ざん・削除していた会社側の主張全体の信用を落とす事情になる

とくに3つ目は重い事情です。打刻を上司が消していた、残業申請を却下していたといった事実があれば、他の月の数字も「実際より少なく記録されている」と推認されます。1か所の不自然さが、全体の評価を変えます。

実務では、「記録が出ないこと」を前提に資料を作るのが正解です。会社が出すのを待つのではなく、自分側の積み上げを先に固めます。ログ、メール、日報、シフト表、業務量の記録。これらを時系列に並べた1枚の表があれば、交渉の初回から具体的な金額の話に入れます。

会社が「うちは残業はない」と主張する場合、その根拠は記録の不存在です。不存在は「なかった」ことの証明にはなりません。

よくある反論 — 会社の言い分と、こちらの整理

会社が言いがちなことこちらの整理
タイムカードがないので請求できない 記録の保存は会社側の義務です。会社が記録していないことで、労働者が不利になる扱いはされません。
自己申告制なので申告した分だけ 申告を修正させていた、または実態と違う運用をしていたなら、申告額がそのまま基準にはなりません。
PCのログは労働時間と関係ない ログインからログアウトまでの記録は、作業時間の裏付けになります。休憩分を除いて積み上げます。

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