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請求 — CLAIM

未払い残業代の請求方法。
労基署・労働審判・弁護士の使い分け

未払い残業代を取り戻す方法は、1つではありません。労働基準監督署への申告、内容証明、労働審判、訴訟、弁護士への相談。それぞれ役割が違い、できることとできないことがあります。順番を間違えると、時間だけが過ぎます。

公開 2026.10.23改訂 2026.10.23根拠 労働基準法 第104条・第114条

よくある相談 — Q & A

相

相談者

まず労基署に相談すれば、会社が払ってくれるんでしょうか。

答

回答者

労基署は是正を指導する機関で、個人の金額を確定して支払いを命じることはできません。金額の解決には労働審判か訴訟が必要です。

相

相談者

じゃあ、順番はどうすれば。

答

回答者

金額の見当をつける、内容証明、6か月以内に次の手、という流れです。各段階の限界を本文で整理しています。

詳しい条件と計算は、この下の本文で確認できます。

01

最初に決めること。金額の見通しを持つ

動き出す前に、請求できる金額の見当をつけます。理由は2つあります。交渉の妥当性を判断できることと、費用や手間に対して見合うかを判断できることです。

見積もりに必要なのは、次の4つです。

  • 月給と、除外できない手当の額(基礎賃金の計算に使います)
  • 月平均の所定労働時間
  • 月あたりの残業時間(時間外・休日・深夜に分けて)
  • 在職期間と、退職日(時効で消える範囲が決まります)

この4つが揃えば、概算が出ます。時効が3年なので、古い分から消えていくことも忘れないでください。請求額が数百万円になる場合は、早めに専門家へ。

02

労働基準監督署。できること・できないこと

労働基準監督署は、法令違反がある事業場に対して指導・是正勧告を行います。申告すれば、会社に調査が入り、未払いが確認されれば支払うよう指導されます。

できること

  • 会社の労働時間管理、賃金台帳、就業規則を調査させる
  • 違反があれば是正勧告を出させる
  • 悪質な場合、書類送検(刑事手続き)に進むことがある

できないこと

  • 個人の未払い額の確定と支払いの強制労基署は「あなたにいくら払え」と命じる機関ではありません。あくまで事業場の是正を指導する立場です。
  • 示談や和解の仲介金額の交渉には関与しません。

つまり、労基署は「会社を動かす」役割、金額の解決は別の手続きという分担です。申告は無料で、匿名でもできます。在職中でも申告できます。

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03

内容証明と、時効を止める手順

会社に請求の意思を明確に伝える手段が、内容証明郵便です。配達証明を付ければ、いつ何を送ったかが記録として残ります。

ただし、内容証明を送っただけでは時効は止まりません。効果は6か月間の完成猶予です。6か月以内に労働審判や訴訟を提起しないと、時効は完成します。

  1. 請求書を作る期間、時間数、計算根拠、請求額、支払期限を明記します。根拠の計算式を添えると、交渉が進みやすくなります。
  2. 内容証明+配達証明で送る郵便局の窓口で差し出します。控えと配達記録は保管します。
  3. 6か月以内に次の手を打つ会社が応じなければ、労働審判か訴訟へ。ここで止まると、猶予は無意味になります。

在職中に送る場合は、職場での扱いが変わるリスクも考えておきます。退職後であれば、その心配はありません。

まず、いくら請求できるのかを知る。

月給と残業時間から、時効で消える前の概算を計算します。3分で終わります。

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04

労働審判と訴訟。金額を決める場

金額を確定させるには、裁判所の手続きが必要です。選択肢は主に2つあります。

労働審判と訴訟の比較
項目労働審判訴訟(通常)
期間の目安2〜3か月程度1年以上かかることも
回数原則3回以内数次〜十数回
判断の主体裁判官1名+労働者・使用者側各1名裁判官
特徴話し合いによる解決を目指す判決で決着
不服の場合異議を申し立てると訴訟へ移行控訴・上告

労働審判は話し合いが中心で、和解金が請求額を下回ることも珍しくありません。ただし、期間が短く、費用も比較的抑えられます。まとまった金額を確実に取りたいなら訴訟、早く決着したいなら労働審判が向いています。

付加金について

未払いが認められた場合、裁判所は同じ額の付加金を支払わせることができます(労働基準法第114条)。ただし、これは自動ではなく、請求した場合に裁判所が判断するものです。請求書の段階から意識しておく価値があります。

05

必要な証拠と、相談先の選び方

そろえておきたい証拠

  • 労働時間の記録タイムカード、勤怠システムの画面、PCのログイン記録、業務メールの送信時刻、日報。
  • 賃金の記録給与明細(全月分)、振込通帳の履歴、源泉徴収票。
  • 契約の記録雇用契約書、労働条件通知書、就業規則、賃金規程。
  • 働き方の記録シフト表、業務指示のメールやチャット、上司の指示内容。

退職すると社内システムを見られなくなります。在職中に、必要な画面を撮影・保存しておくのが現実的です。ただし、業務データの持ち出しは秘密保持義務に触れる場合があるため、自分の労働条件と勤怠に関する記録に限ります。

相談先の選び方

残業代請求は弁護士の業務です。社会保険労務士は、労働条件の整理や社会保険の手続きを扱いますが、裁判での代理はできません(特定の場合を除く)。まずは労働問題を扱う弁護士事務所に、初回相談(多くの場合30分〜1時間、無料または低額)を申し込むのが早道です。

動く順番。時効が近いときの優先順位

請求の手段は複数ありますが、順番を間違えると時効に間に合いません。残り時間で進め方が変わります。

時効までの残り期間別の進め方
残り期間まずやることその次
1年以上証拠の収集、金額の概算内容証明 → 交渉 → 労働審判
6か月〜1年内容証明を送る(猶予6か月を確保)猶予中に労働審判の申立て
6か月未満すぐ労働審判を申し立てる内容証明より先に裁判所の手続き

残り6か月を切っている場合、内容証明から入るのは危険です。催告の猶予は6か月なので、送ってから準備していると、猶予が切れた時点で時効が完成します。この場合は、いきなり労働審判を申し立てるのが正解です。申立てには時効を止める効果があります。

逆に1年以上あるなら、先に内容証明で交渉のテーブルに着かせた方が、費用も時間も抑えられます。「何から始めるか」は、残り期間で決まります。

順序を誤りやすい例内容証明を送って会社が無視し、そのまま半年が過ぎる——これが最も多い失敗です。送った後は、必ずカレンダーに「6か月後」を書き込んでください。

回収額と手間の比較。どこで折り合うか

労働審判は話し合いが中心なので、請求額の全額で終わるとは限りません。現実的な着地点を、数字で見ておきます。

請求額300万円(3年分)のケースで、主な帰結を比較します。

進め方ごとの、手元に残る額の目安
進め方期間手元に残る額の目安
自分で交渉・満額で合意1〜3か月約300万円
労働審判・7割で和解3〜6か月210万円 − 弁護士費用
訴訟・満額判決1〜2年300万円 + 付加金 − 費用
時効完成(何もしない)—0円

弁護士費用は、着手金と報酬の2本立てが一般的です。回収額の2割前後が報酬の目安といわれますが、事務所により幅があります。「満額を取るために1年待つ」より「7割で3か月で終わる」方が、金額でも時間でも有利なことがあるのは、このためです。

判断の分かれ目は、証拠の強さです。タイムカードやログが揃っていれば満額に近づき、記憶だけなら7割を切ります。まず証拠を揃え、その上で着地点を決めるのが順番です。

出典

SOURCES — 出典

  • 労働基準法 第104条(労働者の申告)、第114条(付加金)、第115条(消滅時効)
  • 民法 第150条(催告による完成猶予)
  • 労働審判法(労働審判手続きの回数・異議の申立て)
  • 厚生労働省Q&A「賃金請求権の消滅時効」

よくある反論 — 会社の言い分と、こちらの整理

会社が言いがちなことこちらの整理
労基署に相談すれば会社が支払う 労基署ができるのは是正勧告までで、支払いを命じる権限はありません。金額の回収は、別の手続きになります。
内容証明を送れば時効は止まる 催告による時効の完成猶予は6か月です。その間に労働審判や訴訟を申し立てないと、時効は完成します。
在職中に請求すると不利になる 請求そのものは可能です。ただし証拠の確保と、退職後の生活の見通しを先に立てる方が安全です。

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