会社側 — EMPLOYER
請求された側の確認手順。
何を根拠に、いくら払うことになるか
未払い残業代の請求が届いたとき、最初にやるべきは金額の根拠を分解して確認することです。請求額をそのまま飲む必要も、全否認する必要もありません。論点は基礎賃金、残業時間、充当の3つに絞られます。
よくある相談 — Q & A
相談者
従業員から残業代の請求書が届きました。全額払うべきでしょうか。
回答者
請求額をそのまま飲む必要も、全否認する必要もありません。論点は基礎賃金・残業時間・固定残業代の充当の3つに絞られます。
相談者
まず何から見れば。
回答者
単価の検算です。そこが1円違うだけで、3年分では数十万円動きます。確認の順番を本文で確認できます。
詳しい条件と計算は、この下の本文で確認できます。
01
リスクは「3年分+付加金」。上限から見る
会社側の最大リスクは、3年分の未払い額+同額の付加金+遅延損害金です。付加金は労働基準法第114条にもとづき、裁判所が支払いを命じることができるもので、請求額と同額になります。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 未払い割増賃金 | 時効3年分。在職中でも古い月から消える |
| 付加金 | 請求された場合、原則として同額 |
| 遅延損害金 | 支払いが遅れた期間に対して発生 |
| 是正勧告・公表 | 労基署の指導履歴が残る。悪質なら公表・送検 |
したがって、1人あたりの想定は「年間未払い額×3年×2(付加金)」で見ておくのが安全です。対象者が10人いれば、その10倍になります。
02
論点1:基礎賃金の単価は正しいか
請求額の大半は、1時間あたりの基礎賃金の単価で決まります。ここが1円違うだけで、3年分では数十万円の差になります。
確認する順番は次のとおりです。
- 除外している手当は、法定の除外手当か家族手当・通勤手当・住宅手当などでも、一律支給なら除外できません。
- 役職手当を除外していないか管理監督者に該当しない役職者は、役職手当も基礎賃金に含めます。
- 月平均所定労働時間の計算は正しいか年間所定労働日数×1日の所定労働時間÷12。端数処理の方法も確認します。
- 歩合給・精勤手当を除外していないかいずれも基礎賃金に含める必要があります。
「就業規則に算入しないと書いてあるから除外している」という運用は、法定の除外手当以外では通用しません。就業規則の規定そのものが争点になる類型です。
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03
論点2:固定残業代は充当できているか
固定残業代を導入している会社で最も多いのが、充当の計算違いです。次の3点を確認します。
- 固定残業代の額が、法定の割増額に足りているか「20時間分」として5万円を支払っていても、単価×1.25×20時間が5万円を超えていれば、その分は未払いです。
- 超過分を別途支払っているか固定分を超えた時間については、25%(60時間超は50%)で別途支払う必要があります。
- 契約書・就業規則・給与明細に区分があるか金額と時間数が特定できないと、固定残業代として認められない可能性があります。
とくに、月60時間を超える残業がある職場で、固定残業代を25%のまま計算しているケースは差額が大きくなります。50%部分の未払いが3年分積み上がります。
請求額の妥当性を、同じ計算で確かめる。
基礎賃金・固定残業代・残業時間を入れると、充当後の不足額を計算できます。
04
論点3:労働時間の記録は残っているか
金額の土台は、実際に何時間働いたかです。ここで記録がなければ、会社側が主張できる余地は小さくなります。
- タイムカード・勤怠システム打刻を改変していないか。管理者が一括で修正している運用は危険です。
- サービス残業の存在「定時で退勤」と打刻させ、その後も働かせている場合、実態が優先されます。
- PCログ・メール送信時刻請求側の証拠になります。会社側も同じ記録を持っているはずです。
- 36協定の範囲協定の上限を超える残業は、それ自体が違反です。
労働安全衛生法は、労働時間の状況の把握を事業者に義務づけています。把握していないことは、免責理由になりません。むしろ管理体制の問題として扱われます。
05
是正の順番。何から直すか
請求への対応と、再発防止は別の作業です。順番を分けて進めます。
- 過去分の精算請求額を分解し、認める範囲を確定します。時効が完成した分は法的に消滅していますが、任意に支払えば有効です。分割払いの合意をする場合は書面で。
- 賃金規程の是正除外手当の範囲、固定残業代の区分、割増率を確認します。就業規則の変更は労働者代表の意見聴取が必要です。
- 運用の是正打刻の扱い、残業申請のルール、管理職の意識。規程だけ直しても運用が変わらなければ再発します。
- 専門家の関与金額の算定と法的な整理は弁護士、就業規則と運用の整備は社会保険労務士が担当します。役割が分かれます。
もっとも高くつくのは、判断を先送りすることです。時効は労働者側に有利に働くので、時間が経つほど会社側の防御は弱くなります。
出典
SOURCES — 出典
- 労働基準法 第37条(割増賃金)、第114条(付加金)、第115条(消滅時効)
- 厚生労働省「割増賃金の計算方法」
- 厚生労働省「月60時間を超える時間外労働の割増賃金率の引き上げ」
- 労働安全衛生法 第66条の8の3(労働時間の状況の把握)
よくある反論 — 会社の言い分と、こちらの整理
| 会社が言いがちなこと | こちらの整理 |
|---|---|
| 時効が過ぎた分は払わなくてよい | 時効は、裁判の場で援用して初めて効果が出ます。話し合いの中で任意に支払えば、あとから返還を求めることはできません。 |
| 付加金まで必ず取られる | 付加金は裁判所の裁量で、必ず認められるものではありません。対象になる期間にも制限があり、残業代の時効とは別に管理します。 |
| 就業規則に固定残業代の定めがあるので大丈夫 | 定めがあっても、実際の運用が伴っていなければ無効になります。超過分の支払いと、明細での区分表示を確認してください。 |
未払い残業代が請求できるか、確認する。
月給・残業時間・入社と退職の年月を入れるだけで、請求できる範囲の月数と金額を計算します。登録は不要で、入力内容はブラウザの外に出ません。
- 時効で消える前の金額が分かる
- 固定残業代を引いた不足額が出る
- 管理監督者に当たるかも5問で確認