除外手当 — ALLOWANCES
除外できる手当・できない手当。
名前ではなく、中身で決まる
残業代が少なくなる原因のひとつが、本来は除外できない手当まで基礎から外していることです。除外できる手当は法律で限定されていて、しかも名前ではなく支給の実質で判断されます。
よくある相談 — Q & A
相談者
うち、住宅手当と家族手当は残業代の計算から外されてるんです。
回答者
除外できる手当は法律で限られていて、しかも「家賃に応じて」「扶養人数に応じて」といった条件が必要です。全員一律なら、名前が同じでも除外できません。
相談者
一律で3万円もらってる場合は?
回答者
その3万円は基礎賃金に含まれます。手当ごとの判定と、単価の計算し直し方を本文で整理しています。
詳しい条件と計算は、この下の本文で確認できます。
01
除外できる手当は、法律に列挙されている
割増賃金の基礎となる賃金から除外できるのは、労働基準法第37条第5項と、労働基準法施行規則第21条に列挙されたものだけです。会社が独自に「この手当は除外」と決められるわけではありません。
| 種類 | 除外の条件 |
|---|---|
| 家族手当 | 扶養家族の人数に応じて支給されるもの |
| 通勤手当 | 通勤の距離・手段に応じて支給されるもの |
| 別居手当 | 単身赴任など、別居の事実に応じて支給されるもの |
| 子女教育手当 | 子女の教育費に応じて支給されるもの |
| 住宅手当 | 住宅に要する費用に応じて支給されるもの |
| 臨時に支払われた賃金 | 結婚祝金、死亡弔慰金など、臨時・恩恵的に支給されるもの |
| 1か月を超える期間ごとに支払われる賃金 | 賞与、年3回の支給など |
ポイントは、いずれも「〜に応じて」という条件が付いていることです。家族の人数、通勤距離、住宅費用といった個別の事情に連動していないなら、名前が家族手当でも除外できません。
02
家族手当・住宅手当は「実質」で判断される
厚生労働省の通達(昭和22年9月13日 基発第17号)は、これらの手当について名称の如何にかかわらず、実質によって判断するとしています。
家族手当
扶養家族の人数に応じて増える手当は除外できます。逆に、扶養家族の有無にかかわらず全員に一律で支給される「家族手当」は、家族手当として認められません。配偶者控除の有無だけで差を付ける運用も、実質は別の手当と見られます。
住宅手当
住宅に要する費用に応じて支給されるもの、たとえば家賃の何割かを補助する形なら除外できます。これに対して全員一律の「住宅手当」は除外できません。「住宅手当」という名前で一律3万円を支給している会社は少なくありませんが、その場合この3万円は基礎賃金に含まれます。
通勤手当
定期券代の実費支給や、距離に応じた支給は除外できます。ただし全員一律の通勤手当は、実費と連動していないため除外できないと解されています。
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03
除外できない手当。名前を変えても同じ
次に挙げる手当は、原則として基礎賃金に含めなければなりません。会社が「除外する」と規定していても、その規定は無効です。
- 皆勤手当出勤状況に応じた手当。労働の対償としての性格が強く、除外できません。
- 資格手当・技能手当資格の有無に応じるもので、労働の対価に当たります。
- 役職手当職務の内容に応じた手当。管理監督者でない限り、基礎賃金に含まれます。
- 精勤手当・能率手当・歩合給いずれも労働の成果や状況に連動するため、含める必要があります。
- 一律支給の各種手当「調整手当」「特別手当」など、実質が基本給の一部なら含めます。
ここで問題になるのが、「固定残業代」との区別です。固定残業代は除外するのではなく、割増賃金の前払いとして充当するもの。除外と充当は別の仕組みで、混同すると計算を誤ります。
除外手当を外すと、時給はいくら上がるか。
月給・除外手当・所定労働時間から、1時間あたりの基礎賃金を計算します。
04
基礎賃金の計算と、除外のしかた
1時間あたりの基礎賃金(割増賃金の単価)は、次の式で求めます。
月平均所定労働時間は、年間所定労働日数×1日の所定労働時間÷12で計算します。年間休日120日・1日8時間なら、(365−120)×8÷12=163.3時間です。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 除外できる住宅手当(家賃補助) | −30,000円 |
| 固定残業代 | −30,000円 |
| 基礎賃金の対象 | 260,000円 |
| 月平均所定労働時間 | 163.3時間 |
| 1時間あたりの基礎賃金 | 1,592円 |
もし住宅手当が「全員一律3万円」なら、これは除外できません。基礎賃金の対象は29万円になり、単価は1,776円に上がります。月20時間の残業で、差は年間約4万4千円です。単価の差は、時間外・休日・深夜すべてに効いてきます。
05
自分の給与明細で確認する手順
確認は、次の順番で進めると迷いません。
- 手当の一覧を作る給与明細の支給項目をすべて書き出します。「基本給」「諸手当」とまとめられている場合は、内訳の開示を求めます。
- 支給規定を確認する就業規則・賃金規程に、それぞれの手当の支給条件が書かれています。就業規則は会社に開示請求できます。
- 「〜に応じて」かを判定する家族の人数、通勤距離、家賃に連動しているか。一律か。ここが除外の分かれ目です。
- 単価を再計算する除外できない手当を戻して、1時間あたりの基礎賃金を計算し直します。
再計算した単価が、会社が使っている単価より高いなら、その差額が未払いになります。手当の名称ではなく、支給の条件を見るのが要点です。
一律か、連動か。判定は3行で決まる
除外できるかどうかは、手当の名前ではなく支給条件で決まります。次の3行で判定できます。
| 問い | はい | いいえ |
|---|---|---|
| 金額が、家族人数・通勤距離・家賃などの個別事情で変わるか | 除外できる | 除外できない |
| 支給条件が就業規則に具体的に書かれているか | 除外できる方向 | 除外できない方向 |
| 全員に同じ額を支給しているか | 除外できない | 除外できる方向 |
実際に多いのは、「住宅手当」という名前で全員に一律3万円という形です。この場合、住宅費用と連動していないので除外できず、3万円は基礎賃金に入ります。同じ会社で「家族手当」を扶養人数に関係なく全員1万円にしている場合も同じです。
逆に、家賃の実費を上限3万円まで補助する形なら、住宅費用に連動しているので除外できます。名前は同じでも、支給の決め方が違えば結論が変わります。
判断に迷うのは、名目と実態がずれているときです。「調整手当」「特別手当」「地域手当」といった名前の手当は、法定の除外項目に該当しないため、原則として基礎賃金に含めます。会社が「除外する」と規定していても、その部分は効力を持ちません。
単価の差は、年間でいくらになるか
除外の判定が1つ変わるだけで、単価はどれくらい動くのか。具体的に見ます。
月給32万円(基本給26万円+住宅手当3万円+固定残業代3万円)、年間休日120日、時間外労働が月20時間という条件です。月平均所定労働時間は(365−120)×8÷12=163.3時間。
| 項目 | 除外できた | 除外できない |
|---|---|---|
| 基礎賃金の対象 | 260,000円 | 290,000円 |
| 1時間あたりの単価 | 1,592円 | 1,776円 |
| 月20時間分の割増 | 39,800円 | 44,400円 |
| 差額(月) | — | 4,600円 |
| 差額(年間) | — | 55,200円 |
月4,600円、年間5万5,200円。3年分なら16万円を超えます。1つの手当の扱いが、これだけの差になります。しかも単価は時間外だけでなく、休日・深夜・月60時間超のすべてに効くので、残業の多い人ほど差は広がります。
見落としやすいのは、「除外できない手当」を除外したまま計算している会社です。賃金規程に「諸手当は割増賃金の基礎に算入しない」と書いてあっても、法定の除外手当以外には効力がありません。就業規則の記載を根拠に、単価を低く見積もっている例は少なくありません。
出典
SOURCES — 出典
- 労働基準法 第37条第5項、労働基準法施行規則 第21条
- 厚生労働省「使用者は一定以上の率で割増賃金を支払う義務があります」(リーフレット)
- 昭和22年9月13日 基発第17号(家族手当等の実質判断)
- 厚生労働省「割増賃金の計算方法」
よくある反論 — 会社の言い分と、こちらの整理
| 会社が言いがちなこと | こちらの整理 |
|---|---|
| 家族手当・住宅手当は法律で除外できる | 除外できるのは、扶養人数や住宅費用に応じて支給される場合です。全員に一律で支給していれば、名称が同じでも除外できません。 |
| 手当の名前を変えたので除外できる | 判断は名称ではなく支給の基準です。実質が基本給の一部であれば、名前を変えても割増賃金の基礎に入ります。 |
| 通勤手当も除外の対象になる | 通勤手当は除外できます。ただし住宅手当と一体で支給されているなど、区別がつかない形なら話が変わります。 |
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