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最低賃金 — MINIMUM WAGE

最低賃金と残業代。
対象になる賃金は、実は同じではない

最低賃金と残業代は、どちらも「賃金」の話ですが、計算に入る賃金の範囲が違います。ここを同じだと思っていると、片方の違反を見落とします。とくに固定残業代込みの月給は、確認が必要です。

公開 2026.10.23改訂 2026.10.23根拠 最低賃金法 第4条

よくある相談 — Q & A

相

相談者

最低賃金は満たしていると思うんですけど、残業代も関係あるんですか?

答

回答者

あります。ただし最低賃金と割増賃金では、計算に入る賃金の範囲が違います。精勤手当は最低賃金では除外、割増では算入です。

相

相談者

固定残業代込みの月給なんです。

答

回答者

それは要注意です。固定残業代は最低賃金の算定に入りません。確認の手順を本文にまとめています。

詳しい条件と計算は、この下の本文で確認できます。

01

最低賃金は、都道府県ごとに毎年見直される

最低賃金には、地域別最低賃金と特定最低賃金の2種類があります。多くの労働者に適用されるのは地域別最低賃金で、都道府県ごとに金額が決まっています。

  • 地域別最低賃金都道府県単位で設定。毎年、夏から秋にかけて改定され、10月前後から効力が生じます。
  • 特定最低賃金特定の産業・職種について、地域別より高い水準で設定されるもの。両方が適用される場合は高い方が適用されます。

金額は毎年変わるため、この記事では具体的な額を記載していません。厚生労働省の「最低賃金制度」サイト、または勤務地の都道府県労働局でご確認ください。

重要なのは、勤務地の都道府県の金額が適用されるという点です。本社が東京でも、勤務地が別の県ならその県の金額です(出向などの例外を除く)。

02

最低賃金に入る賃金・入らない賃金

最低賃金の比較に使う賃金からは、次のものが除外されます(最低賃金法第4条、同法施行規則第2条)。

最低賃金の算定から除外される賃金
種類例
臨時に支払われる賃金結婚祝金、死亡弔慰金など
1か月を超える期間ごとに支払われる賃金賞与、年3回の支給など
割増賃金時間外・休日・深夜の割増部分
精勤手当皆勤手当、無遅刻無欠勤手当
通勤手当・家族手当・別居手当・子女教育手当・住宅手当名称ではなく実質で判断

つまり、「月給20万円(各種手当込み)」の20万円が、そのまま最低賃金の比較対象になるわけではありません。手当を除いた部分を、月平均所定労働時間で割って時給を出し、最低賃金と比べます。

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03

割増賃金の基礎との違い。範囲が2つある

ここが最も混同される点です。最低賃金の算定から除外される賃金と、割増賃金の基礎から除外される賃金は、似ていますが同じではありません。

2つの範囲の比較
賃金最低賃金割増賃金の基礎
基本給含む含む
役職手当・資格手当含む含む
精勤手当(皆勤手当)除外含む
通勤手当・家族手当・住宅手当除外除外(要件を満たす場合)
固定残業代除外除外(充当する)

精勤手当が典型例です。最低賃金の計算では除外されますが、割増賃金の基礎には含めなければなりません。「最低賃金は満たしているから大丈夫」と確認しても、残業代の単価が足りていないことがあります。

自分の時給は、最低賃金を超えているか。

月給・除外手当・所定労働時間から、1時間あたりの賃金を計算します。

試算する

04

固定残業代込みの月給が危ない理由

「月給25万円(固定残業代5万円を含む)」という契約を考えます。この場合、最低賃金と比べられるのは基本給部分の20万円です。固定残業代5万円は割増賃金なので、最低賃金の算定には入りません。

月平均所定労働時間が170時間なら、時給換算は1,176円です。勤務地の最低賃金が1,200円なら、24円×170時間=月4,080円の不足が生じます。年間で約4万9千円、3年分で約14万7千円です。

さらに、最低賃金を下回るということは、割増賃金の基礎も低く設定されている可能性があります。残業代の単価が上がれば、時間外・休日・深夜すべての金額が変わります。

注意最低賃金の引上げは毎年行われます。契約時の金額が適正でも、翌年には下回る可能性があります。毎年の確認が必要です。

05

差額の確認と、請求できるもの

確認と請求は、次の順番で進めます。

  1. 勤務地の最低賃金額を調べる都道府県別の金額と、適用開始日を確認します。改定の境目で、月の途中から金額が変わる場合があります。
  2. 除外賃金を外して時給換算する基本給+役職手当+精勤手当(=含まれるもの)を、月平均所定労働時間で割ります。
  3. 差額を計算する最低賃金との差×実労働時間。月ごとに金額が違う場合は、月ごとに計算します。
  4. 割増賃金も再計算する単価が上がるため、残業代・休日・深夜の割増も変わります。

最低賃金の違反は、労働基準監督署の是正勧告の対象になります。差額の請求は、賃金請求権として3年の時効があります。

なお、最低賃金を下回ることを理由に、会社が一方的に契約を切り下げることはできません。引き上げが必要なのは会社側の義務です。

出典

SOURCES — 出典

  • 最低賃金法 第4条(最低賃金の決定)、第28条(差額の支払い)、同法施行規則 第2条
  • 労働契約法 第28条(最低賃金額との差額の支払い)
  • 厚生労働省「最低賃金制度」都道府県別一覧
  • 労働基準法 第37条第5項、労働基準法施行規則 第21条

よくある反論 — 会社の言い分と、こちらの整理

会社が言いがちなことこちらの整理
最低賃金を満たしているので残業代も足りている 最低賃金と割増賃金では、対象になる賃金の範囲が違います。片方を満たすことは、もう片方の適正を意味しません。
固定残業代を含めた月給で最低賃金を判断する 最低賃金の比較では、固定残業代を除いた基本給で見ます。含めて判断すると、実際には下回っていることがあります。
手当を全部足した額で足りている 最低賃金に入る手当と入らない手当があります。通勤手当や家族手当は算入できないので、合計額では判断できません。

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