残業代しらべ/記事一覧/制度と割増/月60時間超の割増は50%

割増率 — RATE 50%

月60時間を超えたら、割増は50%。
2023年4月から中小企業も同じ

残業が月60時間を超えたとき、超えた分の割増率は25%ではなく50%になります。このルールは2023年4月1日から中小企業にも適用されていて、「うちは小さい会社だから関係ない」は通用しません。

公開 2026.10.23改訂 2026.10.23根拠 労働基準法 第37条第1項ただし書き

よくある相談 — Q & A

相

相談者

残業が月70時間なんですけど、全部50%になるんですか?

答

回答者

60時間を超えた分だけが50%です。60時間までは25%、超えた10時間が50%という計算になります。

相

相談者

休日出勤も入れて60時間ですか?

答

回答者

入りません。法定休日労働は別枠で35%です。数え方と計算例を本文にまとめています。

詳しい条件と計算は、この下の本文で確認できます。

01

50%になるのは、60時間を超えた「その分」だけ

正確に言うと、1か月の時間外労働が60時間を超えた場合、60時間までの部分は25%以上、60時間を超えた部分は50%以上の割増率になります。全部が50%になるわけではありません。

月70時間の時間外労働があった場合(基礎賃金1,500円)
区分時間割増金額
60時間まで60時間25%112,500円
60時間を超えた分10時間50%22,500円
合計70時間—135,000円

すべて25%で計算すると131,250円なので、差は3,750円。1か月では小さく見えますが、12か月続けば4万5千円、3年分なら13万円を超えます。60時間超が常態化している職場では、無視できない差になります。

02

いつから適用されるか。2023年4月1日が境目

この50%ルールは、2010年4月1日から大企業に適用されていました。中小企業には猶予がありましたが、2023年4月1日以降に始まる時間外労働から、中小企業にも適用されています。

したがって、2023年4月以降の分については、会社の規模を問わず50%で計算します。時効が3年なので、現在請求できる範囲のほぼすべてが50%ルールの対象です。

「中小企業」の判定

適用の猶予は、業種ごとの資本金・従業員数で判定されていました。現在は猶予が終了しているため、判定自体を気にする必要はありません。すべての事業場で50%が適用されます。

注意2023年4月1日「以降に開始する」時間外労働が対象です。3月から続いている残業でも、4月1日以降の分は新ルールで計算します。就業規則の改定が間に合っていない会社もあり、差額が生じている例があります。

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03

60時間の数え方。法定休日は入らない

ここが実務で最も間違えやすい点です。60時間にカウントするのは時間外労働(法定労働時間8時間を超えた分)だけで、法定休日の労働は含めません。

  • 法定休日労働(35%)60時間のカウントには含めず、別枠で35%の割増を計算します。
  • 法定外休日の労働(25%)週1日の法定休日以外の休日に働いた分は、原則として時間外労働に含まれ、60時間にカウントします。
  • 所定内労働8時間以内の労働は、当然カウントしません。
  • 深夜労働時間外労働に該当する部分は60時間にカウントし、別途25%を加算します。

つまり、法定休日に8時間働いた月は、その8時間は60時間の判定に入りません。「休日出勤を入れたら60時間超え」と思っても、計算上は超えていないことがあります。逆に、平日の残業が60時間を超えていれば、休日労働の有無にかかわらず50%の対象です。

自分の残業は、60時間を超えているか。

月あたりの平均残業時間を入れると、60時間超の部分を50%で計算します。

試算する

04

計算例と、固定残業代がある場合

基礎賃金1,800円、月の時間外労働が75時間、うち深夜が10時間だった場合を計算します。

計算例(基礎賃金1,800円・時間外75時間・深夜10時間)
区分計算金額
60時間まで(25%)1,800×1.25×60135,000円
60時間超(50%)1,800×1.50×1540,500円
深夜加算(25%)1,800×0.25×104,500円
合計—180,000円

固定残業代がある場合

固定残業代が「60時間分」として支払われている場合、60時間を超えた分は50%で別途支払う必要があります。ここで25%で計算してしまう会社が多く、差額が生じます。

また、固定残業代が「45時間分」なのに実際に75時間働いていたなら、45時間超の30時間分すべてが未払いです。そのうち60時間を超える15時間は50%で計算します。固定残業代の時間数と、実際の残業時間、両方が必要になります。

05

代替休暇。割増の代わりに休みを取る仕組み

60時間超の割増については、労使協定を締結すれば、引き上げ分(25%部分)の支払いに代えて有給の休暇を付与できる制度があります。これが代替休暇です。

  1. 労使協定が必要就業規則に定めるだけでは足りません。労働者の過半数代表との書面による協定が必要です。
  2. 代替できるのは引き上げ分だけ25%部分は必ず支払います。50%のうち、25%から50%に上がった部分だけを休暇に置き換えられます。
  3. 休暇の日数には換算が必要引き上げ分の割増賃金額を、1日分の賃金額で割って日数を算出します。

つまり、代替休暇を導入していても、25%部分の支払いは残ります。「休暇を取ったから残業代はゼロ」にはなりません。また、協定がないのに休暇で代替している場合は、割増賃金の未払いになります。

自分の会社に代替休暇の制度があるかは、就業規則と労使協定で確認できます。就業規則は会社が閲覧に供する義務があります(労働基準法第106条第2項)。

締め日が月の途中なら、その期間で数える

60時間の判定は、暦月ではなく賃金計算期間(締め日)で行います。20日締めの会社なら、21日から翌月20日までが1期間です。

この違いは、締め日をまたぐ月に現れます。たとえば、暦月では45時間と55時間だった2か月が、20日締めで区切り直すと58時間と62時間になることがあります。この場合、後半の期間で60時間を超えるため、50%の割増が発生します。暦月で計算すると、この超過を見落とします。

同じ労働時間でも、区切り方で結果が変わる例
区切り方1期間目2期間目50%の対象
暦月で数える45時間55時間なし
20日締めで数える58時間62時間2時間

就業規則に「賃金計算期間は毎月21日から翌月20日まで」とあれば、これが正式な区切りです。給与明細の「勤怠期間」欄に記載があるので、まずそこを確認してください。

変形労働時間制の場合は別1か月単位の変形労働時間制では、所定時間を超えた分が時間外になります。60時間の判定は同じですが、日・週の所定を超えた時間の扱いが加わるため、計算は複雑になります。

「60時間分」の固定残業代という落とし穴

固定残業代を「60時間分」と設定している会社があります。この場合、60時間を超えた部分はすべて50%で別途支払う必要があります。

基礎賃金1,800円、固定残業代60時間分、実際の時間外労働が70時間という条件で計算します。固定残業代は1,800×1.25×60=135,000円。

60時間分の固定残業代がある月の差額
項目計算金額
発生した割増賃金(60時間まで)1,800×1.25×60135,000円
発生した割増賃金(60時間超)1,800×1.50×1027,000円
支払済みの固定残業代—135,000円
不足額162,000 − 135,00027,000円

ここで会社がやりがちなのが、60時間超の10時間を25%で計算する誤りです。1,800×1.25×10=22,500円として支払うと、差額は4,500円。1年で5万4,000円、3年で16万円を超える不足になります。

さらに、固定残業代が45時間分なのに実際に70時間働いていた場合は、45時間超の25時間分すべてが未払いです。うち60時間を超える10時間は50%、残り15時間は25%で計算します。固定残業代の時間数、実残業時間、そのうち60時間を超える部分——この3つが揃って初めて、正しい差額が出ます。

よくある反論 — 会社の言い分と、こちらの整理

会社が言いがちなことこちらの整理
60時間を超えた割増は翌月にまとめて払う 月60時間超の割増は当月の賃金で支払います。翌月への繰り越しは、未払いの期間を作ることになります。
60時間には休日労働も全部含める 法定休日の労働は60時間に含めません。法定外休日の労働は含めるので、どちらの休日かの確認が先です。
中小企業にはまだ適用されていない 2023年4月1日から中小企業にも適用されています。それ以前の期間は25%のままなので、月ごとに率を分けて計算します。

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